大判例

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大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)4525号 判決

1 差止請求について

(一) 原告の商品表示とその周知性

(1) 原告がその主張のころから本件丸缶を使用してスパイスを販売していること(なお、そのほか原告がその主張の意匠権を有し昭和四七年ごろからその主張の如き角缶に入つたスパイスを販売していること)は当事者間に争いがない。

(2) そして、いずれも成立につき争いのない甲第七号証(原本の存在についても争いがない)、第一五、第一六号証、第一七号証の一、二、いずれもその様式体裁により真正に成立したものと認められる甲第一一、第一八、第一九号証、原告代表者本人尋問の結果およびいずれも原告主張の如き製品であることについて争いのない検甲第一、第二、第五号証によると次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(イ) 原告は昭和二九年三月に設立され香辛料の製造販売を主たる営業目的とする会社で、昭和五四年一〇月現在の資本金は一八〇〇万円であり、その昭和五二、三年当時の年間売上高は約一〇億ないし一二億円ぐらいであつて、香辛料業界ではエスビー食品、ハウス食品等の大手三社に次ぐ規模の会社であり、その取扱う主力商品はホテルやレストランで使用される業務用スパイスである。

(ロ) 原告は昭和四六年四月一日その主張の如き意匠の登録出願をし同四七年八月二一日右意匠の登録をうけその権利者となつたものであるが(右事実については争いがない)、原告が右意匠登録の出願にあたつてその最も特徴的部分としていたところは、缶をほぼその中央部で上下に二分しその上半部分を缶の生地を生かした銀色系の生地色とし下半部分を青紫色で彩色し全体を二色で統一した配色でありこれによる帯状のデザインである。

(ハ) 原告は遅くとも昭和四七年ごろからは右意匠権の実施品である角缶に入つたスパイスを主力商品として販売してきたものであり(右販売の事実については争いがない)、その包装用缶の配色とデザインは従来の缶に対し漸新であることのゆえに次第に原告商品と結びついて取引者、需要者に認識されるようになつてきていた。

(ニ) そして、原告は昭和五〇年四、五月ごろからは右角缶と意匠的には同一であるがただ真空包装に適した丸缶すなわち本件丸缶の使用を開始し現在では右丸缶入り商品が原告の主力商品となつているが、原告が昭和五一年九月ごろまでに販売した本件丸缶の数は約二〇万本に達している。

(ホ) なお、原告の主力商品は前記の如き業務用でありほとんどが問屋を通じてホテルやレストランに納入されるものである。

(3) 以上認定の事実と原告代表者尋問の結果および弁論の全趣旨に照らすと、原告が使用する本件丸缶は、被告がイ号缶、ロ号缶に入つたスパイスの販売を開始した昭和五一年一〇月初旬当時には(右販売の事実、時期については争いがない)、既に原告の商品であることを示す表示(包装容器)として少くともその取引者、需要者間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。

(二) 被告の商品表示とその使用態様

被告が昭和五一年一〇月初旬ごろから原告主張の如きイ号缶、ロ号缶に入つたスパイスを関西および九州地方を中心に販売していることについては当事者間に争いがなく、原告代表者尋問の結果と弁論の全趣旨によれば右イ号缶、ロ号缶に入つたスパイスはいずれも原告の本件丸缶入りスパイスの販売先と同じように業務用品として販売されていることが明らかである。

(三) 原告商品との類似性と混同惹起

(1) そこで、まず商品表示としての本件丸缶とイ号缶およびロ号缶を対比してみると次の如き類似点を指摘することができる。

(イ) 本件丸缶とイ号缶およびロ号缶の大きさ、形状はほとんど同一である。

(ロ) 本件丸缶とイ号缶およびロ号缶ではそこに表示されているブランド、商品名、社名その他のコピー部分(文字表示部分)および模様は異なつているが、全体をほぼ中央あたりから大きく上下に二分して色分けし、更に原告主張の各商品表示説明書にあるような帯状を設けてブランド、商品名、社名その他のコピー部分ないし模様を配列する全体の基本的デザインはほとんど同一といつてよいほど類似している。

(ハ) ことにイ号缶はその下半部分正面に植物模様がない点は本件丸缶と異なるが、その上半部分は銀色系の缶の生地を生かした地色を基調とし下半部分は青紫色で彩色されているので、その色彩、配色は本件丸缶とほとんど同一といつて妨げないほど類似している。

(ニ) ロ号缶も前記のとおり全体としての基本的デザインは本件丸缶のそれと同じであり、下半部分正面に植物模様が表示されている点でそのデザインはむしろイ号缶よりも本件丸缶に近いともいい得るが、その配色は青紫色を使用しておらず、上半部分は白色、下半部分は黄色を基調として彩色され上下各両端の帯状部分は赤色になつているので、その色彩、配色は本件丸缶のそれと異なり、色彩、配色からうける印象は本件丸缶のそれとは異つている。

(2) このようにみてくると、被告使用のイ号缶は注意深くみれば文字表示部分において本件丸缶と異なることが看取できるけれども、通常の取引上の注意力をもつて全体的に観察したときはその大きさが同一であるばかりでなく、その最も特徴的で漸新な印象を与えるデザイン、配色の点でほとんど同一であるため両者の類似性は極めて顕著である。

しかして、イ号缶は原告の商品と同じスパイスの包装用缶として使用されるものであり(争いがない)、かつ原、被告の各商品はいずれも業務用品としてほとんど同一の取引者ないし需要者層を対象として取引されるものであること(その様式体裁により真正に成立したものと認むべき甲第九号証、第一二、第一三号証と前掲第一五号証および弁論の全趣旨)に照らすと、被告がイ号缶を使用してスパイスを販売するときは原告の商品と混同を生ずるおそれが充分に存するものというべきであり、右甲号各証によれば現に混同を生じている事例も存することが認められる。

(3) 次に、ロ号缶の類似性については、その大きさ、形状、基本的デザインが本件丸缶と同じである点に着目すると、それはいわば色違いの姉妹版といつた趣きを感得しうるのであつて、人はこれをみてその出所が本件丸缶と同じであると誤認するおそれなしとしない。少くともその形態や基本的なデザインの点で本件丸缶の漸新な特徴を巧みに抜きとり、そのすぐれた自他識別力をフリーライド(唯乗り)したといわれてもやむをえない要素を含んでいる。しかし、右のようなことをいいうるのは、正確には、イ号缶とロ号缶との関係であつて、本件丸缶とロ号缶とを直接比較した場合には、前記の如く本件丸缶を特徴づけそれが原告の商品であることを認識させる最も大きな要素となつているその色彩、配色の点では両者大きく異なるため、看者が両者から受ける印象はかなり異なるというべきである。このように考えてくると、ロ号缶の本件丸缶との類似性を肯認するにはなお躊躇を覚える。結局、ロ号缶の類似性はこれを否定するほかない(なお、右甲第九号証、第一二、第一三号証、第一五号証の記載内容と弁論の全趣旨に照らすと、右甲号各証において類似混同の事例として挙げられているのはいずれもイ号缶に関するものと認められ、また、原告の代表者自身、その本人尋問において原告の商品と結びついて認識されているのは前記二色の配色であり、ロ号缶は本件丸缶とそれほど似ているとは思わない旨供述している点も参照)。

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